パックフィッシャー、それは、一本のモバイルロッドに全てを託した至高の釣り人。愛用のトラギアを片手に、日本全国、いや世界を釣って回ります。目指すはモバイルロッドの釣り図鑑?身近な水辺で繰り広げられる、ポケモンGOさながらの冒険をお楽しみください。
ブダイは冬の好ターゲット
海水温の低下により釣りものの少なくなる冬。今年は例年に無い高水温と異常気象により各地で好釣果が相次いでいるとの情報もありますが、それでも海は確実にオフシーズンに向かいつつあります。
低水温期の選択肢として最もメジャーなのはグレ。表面海水温17℃前後の今頃がまさに最盛期といえるのですが、モバイルロッドで狙うには非常に難しいターゲット。去年も何度か挑みましたが、惨敗を喫した苦い思い出があります。正直コマセを撒くのも億劫なんですよね。
そこで着目したのが、冬に岸辺で海藻を食べるブダイという選択肢。今年は高水温が影響してか、相模灘におけるブダイの個体数が非常に多いようで、各地で驚くほどの好釣果が出ています。
真偽を確かめるべくやってきたのは真鶴半島。かの村越正海氏も動画で紹介されているように、いわばブダイの宝庫のような場所です。
12:01(GMT+9)

毎年冬になると地元の方が海苔で狙う様子を見ていましたが、グレにつられてなかなか狙えずにいました。今年はここ真鶴でも個体数がとりわけ多いようなので、年配アングラーにまじって狙ってみようかなと。
12:40(GMT+9)

冬にブダイを釣るにはまず、干潮の磯でエサとなる青海苔を取らなければなりません。この時期日当たりの良い場所ならタイトプールなどにびっしり生えていると思うので、それをそのまま手でつまみ採ればOK。
ここで注意したいのが、青海苔は本来ならば漁師が採るべき海産資源だということ。釣りエサのために少量採る分には今のところお咎めはないようですが、熊手などで必要以上に採らないようにしてください。
12:48(GMT+9)

だいたいMサイズのジップロックいっぱいに採れれば1日十分楽しめます。余ったら持ち帰って味噌汁の具にしても良いでしょう。磯の香り強し。
ブダイは根頭を釣れ
海苔を取り終わったら次はポイント選び。本州のブダイにせよ、沖縄のイラブチャーにせよ、ブダイ類は基本根回りに付く魚です。
沖に沈み根があり地形が入り組んでいるような場所や、岩の点在するゴロタ場などが良いポイントになります。更にその根回りに海苔が付着していることが確認できれば尚良いでしょう。
13:10(GMT+9)

あとはタナを底スレスレに設定し、鈎に海苔をたくさん付けて流すのみ。仕掛はモバイルロッドなので浮力6号の玉ウキに6号の中通し重り、ハリス2号、チヌ鈎3号の組み合わせで挑みます。
- ロッド トラギアフォーズ944ML
- ウキ サンナーフロートno.5 8号
- オモリ 丸オモリ 6-7号
根際に流した一投目、潮に揉まれて動いていたウキが突如ピタリと止まりました。少しその場でモゾモゾしたと思うと、今度は流れとは逆方向に動き始めます。怪しい。根掛かったかと思い竿を煽ると、何やらでかい魚が掛かった模様。そして突っ込む。暴れる。
竿の弾力でなんとか浮かせると、波間に姿を現したのはまるで鬼瓦のような大きなブダイ。まさか一投目で掛かるとは。しかしタモを持ち合わせておらず、引き上げようとラインをつかんだところで痛恨のラインブレイク。恐らく60センチはあろうかという巨体になすすべなし。
本当のことを言ってしまうと、釣れると思っていませんでした。村越正海氏がブダイを連発していたのは大浜や高浦といった外海に面した地磯。しかしここは観光客が海水浴にも訪れるような小場所です(真鶴愛好者の方なら分かるはず)。はっきりいってふざけ半分の釣行で、釣れなければメジナ狙いに転向する予定でした。
14:05(GMT+9)

まぁ、きっとまぐれだったのでしょう。ブダイなんてそう簡単に掛かるものではありません。あと3、4投して釣れなければ素直にオキアミに切り替えましょう。そして再び根際に流す。ウキがシモる。横に走る。アワセを入れるとまた乗った。しかもデカい。浮いてきたのはさっきより一回り小さいけれど、50センチはあろうかというブダイ。
前回の反省から慎重に寄せ、空気を吸わせてから取り込む作戦に変更。しかし磯にぶつかった衝撃でブダイが覚醒し、根際に猛烈に突っ込んでゆく。そしてパーンと大きな音。バレた。仕掛を確認すると、錆びたサルカンがズタズタに破壊されていました。恐ろしい。
2度あることは3度あるだろうとここでハリスを4号に結び直し。これならどんな大物でも抜き上げられるでしょう。しかしそうは問屋は卸さない。今度はアタリこそあれど、エサだけを取られるように。ただ着水と同時にアタリが出るので相当数のブダイが居ることは分かりました。
もどかしいので再び2号に結びなおし。するとすぐにヒット。浮いてきたのは30センチ級の中ブダイ。これならいけるだろうと抜き上げ無事ランディング。
14:26(GMT+9)

やりました。バラした2尾よりだいぶ小さいとはいえ、これでも立派な#66 ブダイです。ブダイは成長と共にメスがオスに性転換する不思議な魚。メスは茶褐色ですが、この個体は青みがかっているので既にオスへの性転換が完了しています。しかしまだ各所にメスの面影も残っているので、ニューハーフのような状態なのでしょう。
その後もコンスタントに中ブダイを掛けましたが、最初に連発したような大きな固体は姿を見せなくなってしまいました。14時半を過ぎると背後の山に日が隠れ、アタリ自体も遠のいてゆきます。タイといってもやはりベラ科なので、昼間のほうが活性が高いのでしょう。
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やっとの思いで大物を取り込む
ならばと余った海苔をこれでもかと沢山付け、今度はワンドの内側めがけて投げてみました。するとすぐにウキがシモる。エサを沢山付けているので十分食わせてから合わせましょう。1分ほど経ち、ウキが横に走ったところでバシっと。すると最初にバラした大ブダイのような強い引きに見舞われます。
15:01(GMT+9)

姿を見せたのはまるでサファイアのような美しい大ブダイ。鬼瓦ほどの大きさはありませんが、それでもかなりの重量です。最初の反省を踏まえ、今度は自らうつ伏せになって魚のエラに手を突っ込み、波をかぶりつつ引き上げました。
赤いのはメスだからなのか、それともオスの一形態なのかは分かりませんが、それにしても美しい個体。今日はもうこれで充分。7Lのクーラーボックスには入りきらないほど釣れました。
16:15(GMT+9)

身近な磯場で手軽に挑める冬のブダイ釣り。アタリの多さも嬉しいのですが、なんといっても「海苔を流す」というえもいえぬ玄人感がたまりません。
今シーズンは真鶴半島に限らず伊豆半島全域、根府川のゴロタ、三浦半島、房総半島などでも非常によく釣れているので、まずはお近くの磯やゴロタでチャレンジしてみてください。
19:32(GMT+9)

そして気になる身質は、ほんのり旨みの乗った上品な白身。臭みは無く、煮込むと料亭の吸い物のような質のいい出汁を取ることができます。刺身もいいのですが、おすすめはなんといってもマース煮。身がよくスープを吸い、上品な白身と素晴らしいマッチを遂げますよ!