中国が脅かす日本の言論空間と民主主義 五毛党によるSNS工作に注意しよう

自由な海外旅行ができなくなって半年が過ぎた。当初こそ信じ難かったものの、今ではそれにすっかり慣れてしまったようで、パスポートさえあればどこへでも行けたあの時のほうが、異常な時代だったかのように思えてくることもある。

もともと中国やアジア諸国の旅の話を書くために立ち上げたこのブログの内容も、本題からは随分遠ざかってしまった。去年11月に第一回目の中国ディープ旅から帰国して、反省を踏まえた上でまた記事を書きに行くつもりだったので、かなり中途半端なところで連載が中断してしまっている。今やアクセスの大半は釣りの記事と行ったことの無いイギリスの記事で、中国の記事はトップに掲げていても読んでくれる人は少ない。

これが他の国ならコロナ後に連載を再開すればいいのだが、コロナ後の世界で中国を売り込むことなど果たして許されるのだろうかという疑問が湧いてくる。中国を端に発するコロナウィルスで、世界の多くの人が家族や職を失うことになった。ウィルスの発生時点で情報を隠蔽していたという疑惑が仮に本当なのだとしたら、世界は中国を許さないかもしれない。

そしてコロナ禍の世界に何より衝撃を与えたのが、香港における国家安全維持法の制定だろう。中国は世界の目がコロナに逸れている隙に、香港の抗議活動を骨抜きにしてしまったのだ。あれだけ親中的だったイギリスのジョンソン政権さえもこれを機に中国へのけん制を始めるなど、中国は国際社会からの信用を取り返しのつかないレベルにまで落としてしまったように思う。

Twitterには工作員も

またこの件に関して、中国共産党のサイバー工作部隊(通称五毛党)と噂される大量のアカウントが日本のSNS上で日々世論の誘導に当たっているのをご存じだろうか。ツイッターで中国や香港関連の人をフォローすれば、必ずと言って良い程彼らの投稿が目に付くことになるだろう。日本の保守主義者を装い香港や台湾を貶める投稿をするアカウントや、中国社会がいかに優れているかを宣伝するアカウント、中国共産党に不利な投稿をする者を執拗に攻撃するアカウントなどが存在する。

彼らのやり口は実に巧妙で、攻撃対象の弱みを過去のツイートから探り出し、執拗な嫌がらせをしていたりする。これには流石に日本の公安警察も気づいているようだが、日本は言論の自由が保障された民主主義国家である以上、下手な摘発はできないのが現実だ。ようは我々の弱点を突こうとしているのである。

ちなみに僕のツイッターアカウントにも、彼らはたびたび出現していた。中国旅の記事をシェアするとたちまち彼らからのいいねとシェアが入り、お陰でアクセスが増えたこともあった。しかし一度中国批判に転じると、今後は僕を攻撃するアカウントが現れるようになった。そして面白いことに、僕に中国政治や歴史に関する一定の見識があることを知るや否や、彼らはたちまち姿を消してしまった。恐らく彼らは中国に関する知識は無いが、中国には批判的な情報弱者を対象に工作活動をしているのであろう。ようは日本の一般大衆が狙われているのである。

中国という、民主主義に対抗する意志と実力を持つ独裁国家の大国が、民主主義国家の日本で一般国民を対象に組織的に世論工作をしているのだとしたら、それは大きな問題ではなかろうか。それは彼らが日本の民主主義を覆し、中国の社会システムを浸透させる試みの第一歩に違いない。インターネットを利用する日本人なら、この事実は必ず知っておくべきである。

では我々は彼らにどう対処すれば良いのか。得策なのはSNS上で工作員と思しきアカウントを見つけたら、そのまま無視することだろう。スルーすれば彼らの言論が拡散されることはないのだ。そして何より自由と民主主義を尊重し、中国の社会システムに付け入る隙を与えないのが大切である。

「中国はコロナに打克った。だが民主主義国家はこのざまだ。だから何も決められない民主主義より中国の社会システムは優れている。」

彼らは姑息な手段でそう訴えてくるが、社会制度の価値とコロナ対応の良し悪しは必ず分けて考えるべきだ。台湾やニュージーランドなど、民主主義でもコロナの抑え込みに成功している国はあるのだから。

そして残念だが、僕もウィルスを利用して工作活動を行うような国の味方はしたくないので、中国ディープ旅の連載活動は暫く棚上げにしたいと思った。コロナ明けには恐らく他の国を深堀りすることになるだろう。今は日々、そのための知識の習得に追われている。

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この記事を書いた人

『TRANS JOURNAL』編集者。神奈川県出身。京都外国語大学外国語学部卒。在学中に中国・上海師範大学に留学。卒業後は製紙会社などに勤務。なお、ここでの専門はイギリス。パンと白米があまり好きではなく、2020年にじゃがいもを主食とする生活を目指すも挫折する。