皮肉、ジョークは当たり前?イギリス議会の面白い名場面を一挙紹介

民主主義国家の議会では、議論が白熱して場が騒然となることがよくあります。日本の国会でも時折与野党間の激しい攻防が見られますが、民主主義発祥の国・イギリスでは皮肉な野次も日常茶飯事。

民主主義を盛り上げるためのツールとしての性格も強く、味方の呼応や相手の反論が洗練されているので見応えがあります。

今日はBBCの公式Youtubeチャンネルより、面白かったイギリス議会の応酬をピックアップ。流石は栄えあるジョークの国、あなたも思わず笑ってしまうでしょう。

テリーザ・メイ前首相 労働党党首の批判を煽り返す

日本ではイギリスの女性らしい気品やお洒落なファッションが注目されることの多かったメイ氏。しかし、政治家としての彼女は男性にも物怖じせず、しばし強硬な態度を貫くことから、議会では「氷の女王」と呼ばれていました。

不機嫌なメイ氏のエピソードで最も有名なのが、当時労働党党首だったコービン氏との応酬合戦でしょう。コービン氏が代表質問でEU離脱を渋り始めたメイ首相を批判したところ、クリスマスの滑稽劇を引き合いに首相から逆切れされてしまいました。

動画の最後には、まくし立てられてたじたじとなったコービン氏がボソっと「ばかな女」と言ったとされる一幕が写っていますが、本人はこれを否定しています。

ボリス・ジョンソン首相 お茶出し戦略で張り込み記者の追及をかわす

ぼさぼさの髪とシュールないでたちが特徴のボリス・ジョンソン氏。彼の政治家らしからぬチャーミングな言動はイギリスでも人気で、それが彼を首相の座に押し上げた一因だと言われています。

特に面白かったのが、彼がまだ外相だった2018年8月のできごと。失言の多いジョンソン氏は、イスラム教徒の女性が身体を覆い隠すために着るブルカについて、新聞のコラムに「まるで郵便ポストのようだ」と書いてしまい、メディアからの執拗な追及を受けていました。

普通の政治家ならふんぞり返って無視するところですが、ここぞとばかりに違いを見せてくるのがジョンソン氏。なんと自宅前の記者陣営に対し、自ら紅茶を振舞ったのです。

本人は動画で「人道の為だ」と言っていますが、恐らく「何も言うことは無いから帰ってくれ」という意味なのでしょう。やや京都人のようなやり方ですが、ジョーク的な要素も強いのがイギリスらしいところです。

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ブレグジット離脱派ナイジェル・ファラージ氏 EU最後の議場で煽り演説

2016年6月23日の国民投票で決定して以来、3度に渡り延期されてきたブレグジット。しかし2020年1月31日午後11時、イギリスはついにEUから正式に離脱となりました。

イギリスがEU議会に参加する最後の日、かねてからブレグジットを推進してきたイギリス選出のEU議会議員・ファラージ氏は、「もうこれでいじめられることはない」と皮肉たっぷりに演説。「最後だから」と欧州議会では規定違反の国旗まで振り回し、挙句の果てには副議長からマイクを切られてしまいました。

この後彼らはイギリスの民謡「蛍の光」とともに議場から送り出されるのですが、それもなんともシニカルです。

リンジー・ホイル新下院議長 同僚に引きずられて登壇

イギリスは古くから独自の議会政治を発展させてきた国。その歴史は14世紀の枢密院にまで遡れ、1801年の連合王国の誕生と共に現在の議会制度が形作られました。

そのためイギリス議会には、今に伝わるかつての儀礼が数多く現存。無駄な儀礼も今ではジョークとして、敢えて引き継いでいるのだそう。

代表的なのが、下院で議長が新たに任命されるときに、同僚議員が嫌がる新議長を引きずりながら登壇させるという仕来り。これはかつて、議会と王の意見が一致せず、議長が処刑されるという事件を機に、誰も議長をやりたがらなくなったことから生まれた風習なんだとか。

数百年続く儀式のはずですが、どこか中学生がクラスの真面目な生徒を無理やり学級委員に任命しているような雰囲気を感じるのは気のせいでしょうか。

他にも、イギリス議会のあるウェストミンスター宮殿には

・羊の毛に法律を記し、保存する
・与野党が互いに剣を抜いても切れない距離で向かい合っている
・王室からの議会の独立を示すため、女王の前で議場のドアを閉める

などの古い慣習が残されている模様。まるで御伽噺の世界のようです。

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この記事を書いた人

『TRANS JOURNAL』編集者。神奈川県出身。京都外国語大学外国語学部卒。在学中に中国・上海師範大学に留学。卒業後は製紙会社などに勤務。なお、ここでの専門はイギリス。パンと白米があまり好きではなく、2020年にじゃがいもを主食とする生活を目指すも挫折する。