イギリス帝国の歴史と社会を知るためにおすすめの本・書籍15選

議会政治の生みの親、イギリスの歴史を知ることは、現代社会の歴史を知ることでもある。社会が問題にぶつかる都度、議論と妥協、為政者のリーダーシップで乗り越えてきた歴史は、まさに今日我々が暮らす現代社会を生み出したのだ。

その過程で誰がどんな役割を果たしたのか。その結果どうなったのか。イギリスの屋台骨を支えた個性的な「紳士たち」の物語を知ることは、今日のビジネスマンにとっても最上の教養となるだろう。

イギリス史関連の書籍は多数出版されているが、今回は私が読んだ中でのおすすめを紹介したい。

歴史の謎を探る会・イギリスの歴史が2時間でわかる本

長い歴史と重厚な文化を誇る、「紳士の国」イギリス。本書は、歴史初心者の方でも要領よく学べるよう、イギリスの歴史を要点を絞って分かりやすく解説している。イギリス史入門に最適の良書。

中西輝政・大英帝国衰亡史

ローマ帝国をはじめ、歴史上では多くの「帝国」が興隆し、衰亡していった。その意味で世界史は「幾多の帝国の衰亡の歴史」といってもいいだろう。本書は、大英帝国の興隆に寄与した3つの戦争と、衰退の節目となった3つの戦争に着目しつつ、大英帝国が解体に至った理由を克明に描いている。為政者と国民の「精神」が、移り行く歴史の中でどう変化したのかを捉えている点でも見逃せない一冊。

君塚直隆・ヴィクトリア女王

植民地を世界に築き、「太陽の沈まない帝国」と呼ばれた19世紀イギリス。18歳で即位し、為政者とともに「パクス・ブリタニカ」の時代を築いたのが、今もイギリス国民に愛される女王ヴィクトリアだった。本書は、彼女の人生を取り巻くパクス・ブリタニカの政治史を、女王の視座から描いた傑作。

池田潔・自由と規律

「紳士たちの大学」ことケムブリッジ、オックスフォードの両大学は、イギリスの最高学府として世界的にも有名だ。しかしあまり知られていないその前過程のパブリックスクールこそ、紳士道修養の場であり、イギリス人の性格形成に根本的な影響を与えていることを見逃してはならない。本書は若き日にそこに学んだ著者が、自由の精神が厳格な規律のなかで見事に育まれていく教育システムを、体験を通して興味深く描いた名著。

君塚直隆・エリザベス女王

1952年に25歳で英国の王位に就いたエリザベス女王。ウィンストン・チャーチルら十数人の首相が仕え「政治的な経験を長く保てる唯一の政治家」と評される彼女は、決して「お飾り」ではない。70年近い在位の中で政治に関与し、また数多くの事件に遭遇。20世紀末、その振舞いは強い批判も受けた。本書は、イギリス現代史をたどりながら、幾多の試練を乗り越えた女王の人生を描いた名作。

吉岡昭彦・インドとイギリス

イギリス経済史家の著者がインドで眼にしたのは、極端な貧富の差、原始的な農業、停滞する工業化など、かつてのイギリスの栄光を支えた植民地経済の残酷な遺産であった。英印関係の経済的側面に歴史的考察を加えつつ、帝国主義と植民地問題を世界市場全体とその関連において構造的にとらえようとするユニークな史論。

君塚直隆・物語 イギリスの歴史 上

5世紀以降、ケルト人を駆逐しアングロ・サクソン人が定住したブリテン島。11世紀、大陸のノルマン人が征服するが、常にフランス領土を求める戦争を繰り返した。その間、島内では諸侯が伸張。13世紀にはマグナ・カルタを王が認め、議会の原型が成立する。上巻は、大陸に固執する王たちを中心に、16世紀半ばイングランドにエリザベス1世が君臨するまでを描く。大英帝国が興る前の歴史を抑えるために読むべき一冊。

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川北稔・イギリス史 下

EU離脱で国論を二分する混乱を味わったイギリスの、保守性と先進性の間で揺れる歴史をたどる。下巻では、産業革命の時代からEU離脱までの政治史を細かく記述。君塚直隆氏の『物語 イギリスの歴史 上』とあわせて読むことをおすすめしたい。

小林恭子・英国公文書の世界史

千年に渡る膨大な歴史史資料を収蔵する英国国立公文書館。ここには米国独立宣言のポスター、シェイクスピアの遺言書、欧州分割を決めたチャーチルのメモなど、様々な分野の史料が保管されている。本書は、在英ジャーナリストの著者が、史料の解説とともにあなたを歴史の舞台へといざなう必読書。

河合秀和・チャーチル

植民地での従軍、福祉政策の着手、第一次大戦の作戦指揮…歴史を書くことで政治家としての背骨を作ったチャーチルは、言わずと知れた英国史上最も偉大な政治家である。彼は1940年、ただ一国でナチス・ドイツに対峙する祖国を率いて立つ。本書は著者が資料を博捜し、貴重な見聞を交えて描く巨人の伝記である。

ボリスジョンソン・チャーチルファクター

第二次世界大戦でナチスの脅威から世界を救ったチャーチル。今ではイギリス史上最も偉大な政治家として尊敬を集める彼だが、現役時代には鬱に苦しみ、政治的に干されるなど、幾多の困難を乗り越えてきた。本書は、そんなチャーチルを尊敬する現首相・ボリスジョンソン氏が、もう一度チャーチルのことを思い出してほしいと出版した伝記。英国が生んだ「天才」の実像に迫る。なお、翻訳者は『英国公文書の世界史』の小林恭子氏。

河合洋一・シェイクスピア

ウィリアム・シェイクスピアは、おそらく世界で最も知られた文学者の一人だろう。『マクベス』や『ハムレット』などの名作は読み継がれ、今なお世界各国で上演され続けている。本書は、彼が生きた動乱の時代を踏まえ、その人生や作風、そして作品の奥底に流れる思想を読み解く。そこからは今に通じる人生哲学もくみ取れるはずだ。

小林章夫・ロンドンシティ物語

世界の金融センターとして、人類の血脈たる資本の融通を支えるシティ。かつて商工業の中心地だったその一角は、産業革命を経ると、瞬く間に世界金融の中心地としての役割を担うようになる。本書では、シティが大英帝国の発展を支えた歴史と、その仕組みに迫る。

夏目漱石・倫敦塔

英国留学中に、倫敦塔に魅せられた夏目漱石。かつて政治犯を収監する監獄だった塔内を巡りながら、そこに幽閉されたエドワード四世の王子たち、ジェーン・グレーを幻想的に描く。

夏目漱石・私の個人主義

19世紀、世界に冠たる大国の首都・ロンドンに留学した夏目漱石。「私の個人主義」は、在英中に葛藤しながら培ったという彼の近代個人主義を、軽妙な語り口で説いた講演録。一人異国の地で生きる苦悩や、近代化に突き進む日本を憂う様子も垣間見られる。現代社会で自身の在り方に悩む方にもおすすめしたい一冊。

この記事を書いた人

『TRANS JOURNAL』編集者。神奈川県出身。京都外国語大学外国語学部卒。在学中に中国・上海師範大学に留学。卒業後は製紙会社などに勤務。なお、ここでの専門はイギリス。パンと白米があまり好きではなく、2020年にじゃがいもを主食とする生活を目指すも挫折する。