ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』に学ぶ 無気力になったときの対処法

『夜と霧』という著書をご存知でしょうか。

第二次世界大戦中、ナチスドイツによって収容所生活を余儀なくされたフランクルという精神科医が、そこでの人々の心理的変化の様子を淡々と綴った名著です。

ご存知のように、強制収容所での生活は過酷そのものでした。

意志をはく奪され、いつ終わるか分からない極限の集団生活のなかで、人々は徐々に自暴自棄になってゆきます。

そのことをフランクルは、

「未来を、自分の未来をもはや信じることができなくなった者は、収容所内で破綻した。そういう人は未来とともに精神的なよりどころを失い、精神的に自分を見捨て、身体的にも精神的にも破綻していったのだ。」

「生きる目的を見出せず、生きる内実を失い、生きていてもなにもならないと考え、自分が存在する意味をなくすとともに、がんばり抜く意味も見失った人は痛ましいかぎりだった。」

と記しているのですが、そこまでの極限状態ではないにせよ、ちょっと現代社会に生きる私たちにも当てはまる点があると思いませんか。

特に好きでもない仕事のために、自宅と職場を往復する日々。

上司にはやる気を出せと言われるけれど、そもそもその仕事に意味も目的も見出せない。

この現象をフランクルは「ありようが暫定的になる。」と表現しているのですが、ようは無気力になってしまうということですよね。

「無気力」と書くとありふれたことのように思えますが、精神科医のフランクルは、人間にとってこの無気力な状態こそが最も危険な兆候であることを暗示しています。

それはまさに自我を失いつつある状態なのであり、放置すると最悪うつ病や統合失調症などの精神疾患に繋がってしまいます。

そこで今日は、フランクルが「夜と霧」に記したことを参考に、現代人が無気力へ対処する方法を自分なりに考えてみました。

最近日々に張り合いが無いという人は参考にどうぞ。

本を読む


人は無気力になる前に、物事への関心を失ってしまうといいます。社会に出ると仕事に関係ないことはどうしても排除しがちなのですが、それは鬱へと繋がるとっても危険な兆候。

外部との接触を遮断され、極限の集団生活を強いられた収容所の被収容者たちにもその傾向が顕著に見られたといいます。

例え忙しかったとしても、物事への興味関心だけは維持するように心がけてください。忙しい方におすすめなのが、本を読むこと。

本を読むと言っても、普通の読書とは少し違います。読書自体が目的なのではなく、興味関心の幅を広げるために本を読みます。例えば、僕の場合はこんな感じ。

例)
1.自動販売機で買ったミルクティーが美味しかった→紅茶の専門書を買って読んでみる。
2.今日商談した取引先の人がイタリアに旅行したと言っていた→イタリアに関する本を買って読んでみる。

ポイントは日常の些細なことから本を選ぶこと。そうすることで知識の幅が偏りなく広がり、日常がどんどん楽しくなっていきます。

海釣りに行く


結局お前はそれが言いたいのかと言われそうですが、これには科学的根拠があります。それは、潮風に含まれる塩分に強い抗うつ作用があるということ。海に行き、潮風に当たると気分が清々しますが、それは実は塩分の作用によるものだといわれています。

もちろん、海に行くだけでもある程度の効果は期待できるのですが、無気力を改善したいなら圧倒的に釣りがおすすめです。これ、釣り人なら皆わかると思うのですが、海辺で長時間釣りをしていると中枢神経に直接作用する何かを感じるんですよね。

それまで無気力でも、潮風に当たると突然気分が変わり、暫くすると神経が高揚してきます。ひどいとなぜか怒りっぽくなり、テトラの上で一人でクソ!とか言いだします。やがてほとぼりが覚めるととてもスッキリしていて、それまでの無気力が嘘みたいに蘇ります。

これは自分の推測ですが、潮風の塩分と狩猟本能がダブルで中枢神経を覚醒させるからなのでしょう。だって、川や湖での釣りや、ただ海に居るだけではそこまでの状態にはなりませんからね。とにかく、海釣りが人間のメンタルにいい影響をもたらすことに間違いありません。

発信する


フランクルは、収容所生活で主体性を簒奪され、生きる目的を見失った人間は総じて破綻したと言っています。これはなにも収容所生活に限った話ではなく、高度な調整と自己犠牲を伴う現代の組織活動においても起こりうることです。

特に日本の会社は仕事以外のあらゆることまで組織人であることを要求してくるので、自分を見失っている人も多いのではないでしょうか。

自宅と職場を往復する日々で、もう生きる意味が分からない。そう思ったら、僕はインターネットを利用して何か発信活動をされることをおすすめします。

ブログ、YouTube、SNSと、アウシュビッツとは違い現代にはあらゆる自己表現の手段がありますよね。これを使わない手はないと思います。

発信におけるポイントは、自分自身が主体になることと、発信の目的をもつことです。

例えば、「自分の趣味」に関することを、「趣味仲間を作るため」「フォロワーを増やすため」「副業でお金を稼ぐため」に発信するという感じ。

フランクルのいう破綻した人間にならないためにも、日常の中に少しでも自分のための目的を作るように心がけましょう。

参考図書
ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』
みすず書房 新版

この記事を書いた人

『TRANS JOURNAL』編集者なり。神奈川県出身。京都外国語大学外国語学部卒。在学中に上海師範大学に留学。卒業後は製紙会社などに勤務。翻訳もたまに。ここでは興味の赴くままに、イギリス帝国や中国に関する記事を執筆。