ベトナムの郷土料理フォーとは?本場ハノイの路地裏で頂く絶品米麺の実力

2019年11月、悪化する香港情勢と警察の登場に嫌気が差した私は、中国からの脱出を画策します。広州から陸路で最も近い国、それはベトナムでした。初の中国語圏外にやや怖気づいていましたが、現地では素晴らしいグルメと出会うことに。

※この記事は、2019年秋の中国旅の続編です。

中国南寧からベトナムハノイまで、友諠関を越えてやってきた。僕は中国語圏から出たことが無く、ベトナム語もできないので困難な旅となることを予想していたが、いざ来てみると予想に反してかなりイージー。

宿はCtripで予約できるし、ベトナム語はアルファベット表記なので看板に何が書いてあるのかすぐに調べることができる。

ベトナム入り二日目にして、とりあえずPHOはフォーという意味だということが分かった。

僕がベトナムに来たたったひとつの理由、それは現地の食堂でフォーを食べることだった。

フォーとは、米粉を使って作られるベトナムのライスヌードル。ベトナム、特に北部ハノイでは一日三食全てフォーで済ませる人が居るほどなくてはならないソウルフードだ。

ハノイの市街地を少しでも歩いてみれば、至る所にPHO GA(鶏肉のフォー)やPHO BO(牛肉のフォー)などの看板を目にすることができるだろう。

価格も30,000ドン前後(141円)と手ごろなので、経費を圧縮したいバックパッカーの心強い味方だ。

ハノイで鶏肉のフォーにハマる

僕がハノイで初めてフォーを食べたのは、ハノイ歌劇場のそばにあったお洒落なレストランだった。

普段の旅では意識を低めているので、お洒落なレストランに入ることはまず無いのであるが、ベトナム料理を食べるのは初めてなのでまずは慣らしにと良さげなレストランを選んだ。

入店すると、早速アオザイのような制服を着たスレンダーなお姉さんにたちに取り囲まれ、目が泳いでしまう。

中国では蘭州ラーメンや沙県小吃などを常食としていたタチなので、お洒落な場所はやはり決まりが悪い。

席に着くと、アオザイのスレンダーなお姉さんが、PHO GAは鶏肉のフォーで、PHO BOは牛肉のフォーだと教えてくれた。

牛肉ベースのスープは中国でさんざん味わってきたので、ここでは折角なので鶏肉のフォーを注文することにした。

フォーとは、ベトナムで常食されている、米から作られるライスヌードルのこと。ようはビーフンの一種だ。しかし普通のビーフンとは違い、フォーは平たく引き伸ばされているので、米麺ながらきし麺のような食べ心地のする不思議な食べ物だった。

実際に食べてみると、まさに平たいことこそがフォーの真髄であることが分かるだろう。

きしめんといい、広東省の河粉といい、麺類は平たく引き伸ばすと何故か美味しくなるのだが、それはフォーにおいても例外ではない。食感もさることながら、何故かスープの味が引き立つのだ。

フォー自体の味は淡白なのだが、鶏肉の出汁が効いたあっさりとしたスープが乗ると途端に味わい深くなるのは気のせいだろうか。

そして、それに香草の香りと生トウガラシの辛みや、ライムのほどよい酸味などを加えると、更にえもいえぬエスニックな風味に進化するのだった。

食べていて代謝が促されているのを実感できるというか、明らかに体にいいのが分かる代物である。

ここでPHO GAを食べてからというもの、もうすっかりフォーにハマってしまい、ついぞ1週間全ての食事をほぼフォーで済ませてしまった。

もうフォーを主食とするためだけに、ベトナムに移住するのもありなのかもしれない。

トンニャット公園でローカル店へ

その日の午後、僕は既にローカルなフォーのお店を求めてハノイの路地裏を彷徨っていた。

観光客の居ないディープな通りに迷い込むと、農産物を売る笠を被った女性や、バイクに乗った地元の男たちやらでごった返していた。

30分ほどお店を探して、トンニャット公園のほど近くでやっと見つけたのが、ハノイらしいオープンスタイルのフォーのお店。

先ほどのレストランとは違い、客は地元民ばかり。メニューもPHO GAしかない正真正銘の専門店だった。

軒先には店員(家族?)の若者が数人たむろしていて、中に入るとすかさず英語で日本人かと聞かれた。身なりと挙動でわかったらしい。

そうだと答えると、その場に居た若者全員が歓声を上げた。

到着直後から感じていたが、ベトナムはたぶん親日国なのだろう。中国とは違い、人とコミュニケーションを取るときに自分が日本人だということを気にする必要がないのが楽だった。

中国でもそれで嫌な思いをすることはほぼ無いが、それでも相手の出方が気になるし、逆に気を遣われてしまうことすらある。僕は今まで中国から出たことが無かったので、ベトナムの人の純粋な親日感情が新鮮だった。

ほどなくして、感じの良い若い女の子がにやにやしながらフォーを持ってきてくれた。

前のレストランのものとは違い、香草とネギがたっぷり入れられているのが特徴的だ。恐らくこちらがより本場スタイルのフォーなのだろう。

肉、野菜、炭水化物を手軽に全て、美味しく摂取できるなんて、バックパッカーの味方以外の何物でもない。

また、ハノイには汁なしタイプのフォーもあった。

メニューにはPHO TRONとあり、酸味の効いた柑橘系のタレをかけて食べるスタイルだった。トッピングは鶏肉と香草、キュウリやピーナッツなど。見るからにヘルシーで、盛り付けもお洒落。女性にもおすすめできる一品だろう。

ブンも食べてみる

そして、ベトナムにはフォーの他、ブンという米麺料理があるのをご存知だろうか。原料はフォーと全く同じなのだが、フォーが平たいきしめん状なのに対し、ブンはしらたきのような細くちぢれた形をしている。

なかでもBUN CHAはPHO GAと並んでハノイを代表する郷土料理で、街中に専門店の看板を見ることができた。

ハノイ歌劇場のレストランでフォーを食べてからというもの、すっかりその魅力にハマってしまい、一生フォーだけを食べ続けていたい気分だったが、折角なのでBUN CHAも試してみることにしよう。

PHO GAとは違い、BUN CHAは牛肉の入った熱い甘めのスープに、麺と香草をひたして食べるつけ麺だ。

麺の見た目は中国のビーフンに近いのだが、食感はより弾力が強く、噂通り縮れていた。PHO GAと同じく、肉、野菜、炭水化物が同時に摂れるのがうれしいところだ。

更に、ハノイには揚げたライギョのブンまであった。ライギョは日本の河川にも生息する肉食魚(外来魚)で、ゲームフィッシングのターゲットとして釣り人の間で親しまれているのだが、今日の日本で食用になることはまずないだろう。

しかし、ここハノイではライギョは重要な食用魚だった。元々非常においしい魚で、日本でも霞ケ浦など一部地域で食用とされてきた歴史もあるが、そのグロテスクな見た目から食べるのにどうしても抵抗を感じてしまう。

泥臭さを覚悟して、勇気を振り絞って食べてみたが、案外臭みは気にならず。見た目に反して上品な味わいで、これなら今度日本で釣って食べてもいいのかもしれない。

ブンで一つ気になったのが、香草を半生の状態で食べなければならない点。

経済発展著しいベトナムといえど、上下水道が農村まできちんと整備されているわけではないので、生野菜には広東住血吸虫などの寄生虫のリスクがあった。

僕は潔癖な質ではないのでぜんぶ食べたのだけれど、もし嫌なようならPHO GAなどのスープベースの米麺を食べることをおすすめする。

しかしそのような報道は未だかつてないようなので、気にし過ぎるのもよくないだろう。

この記事を書いた人

『TRANS JOURNAL』編集者。神奈川県出身。京都外国語大学外国語学部卒。卒業後は製紙会社などに勤務。ここでの専門はイギリス。パンと白米が余り好きでなく、2020年にはじゃがいもを主食とする生活を目指すも挫折する。